大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(ネ)325号 判決

被控訴人等は控訴人に対し昭和二十四年二月一日より同年五月末日までの一ケ月金三十三円十二銭の割合の及び同年六月一日より同年十一月十五日までの一ケ月金五十三円の割合の金員を支拂え。

控訴人その余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを十分しその九を控訴人その一を被控訴人等の負担とする。

二、事  実

控訴人は原判決を取消す、被控訴人等は控訴人に対し千葉縣匝瑳郡八日市場町イ三十三番地所在木造亞鉛葺平家建住家建坪七坪五合を明渡せ、被控訴人等は連帶して控訴人に対し昭和二十四年二月一日より同年五月末日まで一ケ月金三十三円十三銭の割合の及び同年六月一日より右家屋明渡に至るまでの一ケ月金五十三円の割合による金員(昭和二十四年十一月十五日までは賃料でその後は損害金)並びに昭和二十四年六月一日より右家屋明渡に至るまでの一ケ月金十円八十銭の割合による地代を支拂え、訴訟費用は第一、二審共被控訴人等の負担とするとの判決を、被控訴人等は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述は控訴人において本件家屋は昭和十三年以前の建築にかゝるもので、賃料の増加は物價廳の告示に基くものである。又地代の請求は特約によるものでなく賃料の外に当然請求し得るものである。控訴人は千葉縣匝瑳郡八日市場町イ百十二番地に工場兼用の家屋を所有しているが、これは自分の長男江波戸藤治郎が居住使用中であり、又控訴人現住の家屋は生活資金及び税金調達のために昭和二十四年五月十日平山菊司に既に賣却し、昭和二十五年四月三十日までに明渡す義務があるので自己の住家に使用するため本件家屋の明渡を求めるにつき正当な事由があると陳述し、被控訴人等において本件家屋が昭和十三年以前の建築にかゝるものであること、その賃料が昭和二十四年六月一日以降は金五十三円であることは認めると陳述した外は原判決事実摘示と同一であるから、茲にこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

控訴人主張の請求原因は「控訴人は昭和二十年四月二十七日被控訴人等に対し、本件家屋を賃料一ケ月金五円三十銭期間を一ケ年と定めて賃貸したものであるが、一ケ年の期間を経過したので被控訴人等にその明渡を請求したが應じない。そこで昭和二十四年五月七日被控訴人等に対して同年十一月十五日までに本件家屋を明渡されたいと催告したものである。若し本件賃貸借が賃貸期間の満了した昭和二十一年四月二十七日以後も存続していたとするならば、前示明渡の催告は解約の申入に該当するから本件賃貸借契約は昭和二十一年十一月十五日を以て終了したものである。そうして控訴人所有の工場兼用の八日市場町イ百十二番地の家屋は長男江波戸藤治郎が居住使用中であり、又控訴人現住の家屋は平山菊司に賣却し昭和二十五年四月三十日までに明渡す義務があるので、自己の住家に使用するため本件家屋の明渡を求むる次第であり、解約の申入に付き正当の事由がある。」と云うのであるからその当否を案ずるに、被控訴人等が控訴人より昭和二十年四月二十七日本件家屋を賃料増額の点に関する約定を除き、その他は控訴人主張のような約定で賃借したことは当事者間の爭のないところである。控訴人は本件賃貸借期間が一ケ年であるから昭和二十一年四月二十六日終了したと云うが期間の定めある賃貸借は当事者が期間満了前六月乃至一年内に相手方に対し更新拒絶の通知をしなければ期間満了の際前賃貸借と同一の條件を以て更に賃貸借をしたものと看做されるから、本件賃貸借も一年の期間経過によつて当然終了するものでなく、更新拒絶のない限り毎年四月二十七日を以て同一條件で更新されるものと看做されねばならず、期間の定めのない賃貸借を終了させる解約の申入を特約のない本件賃貸借に適用することはできない。然しながら解約の申入は將來において賃借人に対し賃貸家屋を賃貸しない旨の賃貸人の意思の表現であるから、更新拒絶をも包含するものと解するのを相当とする。そうすれば控訴人の被控訴人等に対する右解約申入の通知はその後六月乃至一年の間に到來する本件賃貸借終了時期即ち昭和二十五年四月二十六日の更新時期において賃貸借の更新を拒絶したものと解することができる。そこで進んで右更新拒絶が正当の事由に基くか否かを審案するに控訴人はその居住家屋を平山菊司に賣却したと主張し、この事実は眞正に成立したと認められる甲第二号証により認定ができるが、特に賣却を余儀なくされた事情に付ては立証するところなく又たとえ長男に居住させているとは云え他に八日市場町イ百十二番地に工場住宅兼用の家屋を所有していることはその認むるところであるから、相手方たる被控訴人等が本件家屋を必要としないと云うことが確定されない限り、控訴人は被控訴人に対し賃貸借の更新を拒絶するにつき正当の事由があると認めることはできない。そうすれば控訴人の更新拒絶の通知はその効がなく賃貸借は更新されたもので家屋の明渡を求むる控訴人の本訴請求は採用に値いしない。

次に賃料及び地代の請求につき判断するに本件家屋が昭和十三年以前の建築にかゝること、当初の昭和二十年四月二十七日の本件約定賃料額が一ケ月金五円三十銭であつたことは爭がないから、当事者間に賃料増額につき特約のあつたと否とに拘らず一應控訴人は地代家賃統制令に基き物價廳告示により修正された家賃、即ち昭和二十二年九月一日よりは一ケ月金十三円二十五銭、同二十三年十月十一日よりは一ケ月金三十三円十二銭(單位切捨)、同二十四年六月一日よりは一ケ月金五十三円を請求し得る筋合である。從て控訴人の請求賃料中昭和二十四年二月一日より五月末まで一ケ月金三十三円十二銭の割合によるもの、同年六月一日より同年十一月十五日まで一ケ月金五十三円の割合によるものはこれを認容し得るものと云わねばならない。然しながら同年十一月十六日以後は控訴人は賃貸借は終了したとして賃料相当の損害金を請求するものであるから(賃料として別途に請求し得るは格別)本訴においてはこれを排斥する。

被控訴人等は昭和二十四年二月分以降の賃料は控訴人において受領を拒絶したので供託したと主張するが、控訴人が弁済の受領を拒絶したことは被控訴人等において立証しないところであるからその主張は採用ができない。即ちその供託をしたことによつて賃料の支拂が済んだものと見ることはできない(但し控訴人がこの供託を承諾し供託金を受領したとすればその範囲で賃料支拂は済んだことになると見られようが、本件においてさように認め得るような証拠は何も出ていない)。又控訴人は昭和二十四年六月一日以降の家屋敷地の地代を請求するが、家屋の賃貸借契約においては特に約定しない限り賃料中には当然土地の使用料を包含するものと解せなければならないから、かかる特約の主張のない本件ではこれを認容することはできない。

敍上説示する通りであるから原判決は一部これを変更せねばならないものとし、民事訴訟法第三百八十六條第八十九條を適用して主文のように判決する。

(裁判官 中島登喜治 箕田正一 小堀保)

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